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なりたい「場所」が示すもの

こんばんは。代表理事の山田です。

久しぶりに、大阪・西梅田の「サンケイホール・ブリーゼ」に行ってまいりました。

シャンソン歌手の、峰 大介さんのリサイタルです。

(画像お借りしました)

 

峰先生は、私の母と古くからのお知り合いでもあり、大阪で開催していたプチ・サロン・デュ・カンサイにも御出演いただいた経緯があります。シャンソン歌手としては、関西では重鎮のお一人。でも、どなたに対しても大変柔らかな物腰の、素敵なムッシューです。声楽で鍛えたゆたかな発声と、フランス語と日本語両方でシャンソンを表現できる才をお持ちです。毎年、新曲を交えたリサイタルを開催され、門下生も沢山お持ちで、音楽と人生の両方に丁寧に向き合っておられるお姿に、尊敬の念を禁じ得ません。そして、日本人男性で、これほどフランスの香水が似合う方もまた珍しく。初めてお目にかかった時、ずいぶん前のことですが、ふとした身ごなしと共にフワリと香る香水が、まさに「パルファン」と呼びたくなるフランスの香りで。しかも、それが全く嫌味なく、しごく自然に感じられたのは、シャンソンとパリの空気を愛するお気持ちと、相手を慮るお心の細やかさのなせるわざでしょう。サロンに御出演いただいた時のことだったでしょうか、楽屋として使っていただいたお部屋に用があって伺うと、たまたまご不在にされていたのですが、ドアを開けたとたん、かすかに香水の残り香がして。椅子の上に無造作にかけられたステージ衣装のジャケットと相まって、フランス人男性の色気のようなものさえ感じて、思わずドキッとさせられたことを覚えております。今回のリサイタルも、満席のお客様を前に、サービス精神満点、かつお歳を重ねるごとに艶と深みを増す美声で名曲、新曲の数々をご披露くださいました。

さて、話は少し変わりますが。ずいぶん前に、ある本でこういう問いを見かけました。

「もし、自分が《なる》としたら、どんな場所になりたいですか」

その「場所」に、自分の心の奥に秘めた願いや思いが反映されているのだそうです。一種の心理テストのようですが、その後、心理学や演劇のワークショップ関係のエクササイズなどでも目にしましたので、もしかしたら有名なものなのかもしれません。ちょっと面白く思って、その後しばらく、会う人毎に尋ねてみました。

そうすると、皆さん、それぞれにお答えが違っていて、大変興味深く。会社員の方は、「会社の社屋。社員が皆気持ち良く働けるような場所として」と仰る方と、「会社以外の場所(旅館・ホテル・海・山・居酒屋など)」というお答えの方に分かれたのが、驚きというべきか、なるほどというべきか。お家におられることが多い方は、「居心地がよくて、家族がすぐに帰ってきたくなるような家になりたい」とか「道行く人が振り向くような、お洒落な家になりたい」と、「家」に関するお答えが多く。中でも、印象強く覚えているのは、女子大生2人の答えで、二人とも同じ専攻で、同じブティックでアルバイトをし、学生生活は非常に似ているにも関わらず、一人は「お洒落なブティックになりたい。お客さんが笑顔で服を買っていったり、憧れてウィンドーショッピングするような店」と言い、もう一人は「きれいに掃き清められた、静かな神社になりたい」と。その後の二人の卒業後の進路などを見ていると、なるほど、それぞれの答えのイメージに近い人生を歩み始めたように見えました。

さて、私はどうか、と言うと、昔も今も答えは変わっていません。むしろ、その答えは、以前よりも現在の方が確信を増しているように思います。それは「劇場」です。

決して大きくはないけれど、落ち着いて伝統を感じさせる外観と内装を持ち、最先端の電子機器やハイテク設備はないけれど(要る時は外注!)、自慢は音響の良さと、演じる側にとって快適なステージ空間(床と内壁は上質の木材をふんだんに使用)、いつまでも座っていたい快適な座席。お客様の前で演奏すること、演じることを本当に愛する演奏家や俳優、アーティストが入れ替わり立ち替わりし、最高のパフォーマンスを見せる場所。毎日多くのお客様がお越しになり、笑顔や、興奮さめやらぬ表情と共にお帰りになる場所。イメージとしては、おこがましいですが、英国ロンドンにある「ハー・マジェスティック・シアター」(Her Majestic Theatre)です。


(画像お借りしました)

 


(画像お借りしました)

 

久々に、サンケイホール・ブリーゼの、漆黒の劇場空間に身を置いて、そんなことを思い出したひとときでした。

さて、皆さんは、どんな「場所」になりたいですか?

また、お立ち寄り下さいませ。

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