カンセイ・ド・アシヤ文化財団カンセイ・ド・アシヤ文化財団

「しろちゃん」の話

こんばんは。今日は深夜になってしまいました。遅くに失礼します。
代表理事の山田 良です。

 

酷暑が続きますね。

 

目下の仕事事情で、毎日のようにあちこちの路線の電車を利用していますが、
うち続く高温のために、線路のレールが熱々になっているとか。
レールが高温になってしまっているので
徐行運転しております、などという車内アナウンスを
聞いて仰天しております。
熱中症など、気をつけたいことが多々。
皆さま、それぞれに厚くご自愛くださいませ。

さて。
14日には、もう一つ「パリ祭」のお呼ばれがありまして。
京都へ行って参りました。
今日のお話は、ちょっと長めです。

今回の「パリ祭」会場は
関西日仏学館の建物

(現在は在京都フランス総領事館/アンスティチュ・フランセ関西)です。

長年の風雨にさらされて、むしろ味わいを増した
白亜の建物。



こちらの「パリ祭」は、

在京都フランス総領事館からご招待をいただいて
寄せさせていただきました。
本来ならば、
私のような無位無冠の若輩が伺えるものではないのですが
当財団の前身機関の頃から
長くお付き合いをいただいている関係で
このようにご招待をいただきました。
有り難い限りです。

こちらの「パリ祭」は、
数年前から、おそらく当時の総領事様の御発案で始まったかと
記憶しておりますが、
京都市内および近郊でお仕事をされている
様々な業種の企業、団体、お店が一同に会し、
いわば見本市のようなかたちのパーティーになっています。

こじんまりとした空間一杯に、
「ええもん、おっせ」(いいもの ありますよ)
「こんなん どうどす」(こんなの どうでしょう)
の、はんなりとした中にも熱気のある

京都のビジネスの空気を感じながら

ご自慢の逸品、一品を見せていただき、味わわせていただき。

久しぶりにお目にかかる、京都のお知り合いの皆さまとのひとときも
楽しませていただいて。
有り難いことでした。

さて、ここに来ると、いつも楽しみなことが一つあります。
それは
「しろちゃん」に会うこと。

「しろちゃん」は犬です。

しかし、こちらの建物で飼われている犬、というわけではなく。

絵の中の 犬なんです。

こちらの建物には、
藤田嗣治(ふじたつぐはる)画伯が、
この建物のためにわずか四日間で描き上げたという絵が
収められています。

フランスと御縁の深い画伯が、フランス北部、ノルマンディーの春の風景を
三人のフランス人女性の姿と共に描いたこの作品は、
当時の新聞にも採り上げられて話題となりました。

(下は1936年4月10日の『京都日出新聞』の記事です。
京都府立大学図書館蔵のもののコピーを、アンスティチュ・フランセ関西広報部の
長谷川さんの御厚意により、閲覧、複写をいただきました。
長谷川さん、ありがとうございました!
それにしても・・・藤田オカッパ画伯って・・・
たしかにトレードマークの髪型でしたけれど・・・
当時の新聞はおおらかというか、ユーモアがありますね(笑))


絵自体は、こちらです。↓

 


私がこの絵に初めて出会ったのは、もう三十年以上前のことです。
追々書いてまいりますが、
母たちが主催していた音楽コンクールの会場として、
こちらの建物を何年間か使わせていただいていたことがあり。
小さかった私も、母に連れられて、毎年この建物を訪れていました。

晩秋のことです。学館の庭の木々が鮮やかに色づき、表通りの向かいは京都大学、
黄色い銀杏並木が印象的でした。

コンクールの間中、退屈だった私は、
建物のあちこちを見て回りました。

そして、ある大きな部屋の扉を開けた時、

「しろちゃん」に会ったのです。


白い花が咲き乱れる木(りんごの木だそうです)が画面左手に。
右手には、地元の田舎娘と、都会から来た娘たちが思い思いのポーズで
佇んだり座ったりしている。
煙ったような、やわらかい空気感の画面の中央下方。
「しろちゃん」がいました。

この犬だけが、こっちを見て笑っている。
そのことが、非常に印象的でした。

当時、私にとって「世界」というものは、
三人のフランス娘のように見えていたのだと思います。

遠くを見ている、横を見ている。こちらに視線を向けていない存在。
ちょっとよそよそしくて。きれいだけれど、
どこか手が届かない雰囲気をもっている。

その中で、「しろちゃん」だけが こっちを見て笑ってくれている。
何があっても大丈夫だよ、と言ってくれている。

そんな風に感じられて、絵の中の白い犬のことを
いっぺんに好きになりました。

「前足の向きがおかしい、とも言われるんですよ」
と長谷川さん。たしかに、犬の前足にしては、向きが不自然なようにも見えますね。
 でも、当時の私には、その前足も、

逆に、こっちに向かって手をさしのべてくれているように見えて、
かえって さらに いとおしい気持ちになりました。

  以来、「しろちゃん」に会うのが楽しみになった私は、
毎年、まるで『フランダースの犬』の少年ネロが、
教会でルーベンスの絵を見るのを楽しみにするのと同じように
秋になるとひそかにわくわくしていました。

ところが。
ある年のこと。
絵が、いつもの場所からなくなっていたのです!

大ショックでした。
後で聞いた話では、建物内部の模様替えや改修の際、
『ノルマンディーの春』の絵は、その都度あちこちに移されていたようです。
おそらく、たまたまそのうちの1回にあたったのでしょう。

その後、長い時間がたって。

私自身、「しろちゃん」のことを忘れかけていました。
そんな時。
建物1Fのパブリックスペース(現在の場所)に
絵が掛けられているのを知りました。

お向かいの大学でお世話になっていた頃で、
美術好きの友人から
「藤田嗣治の絵でしょ?今は1Fの、みんなが見られるところに移ってるよ」
と聞いて、すぐに見に行きました。

「しろちゃん!」

しろちゃんは、昔と全く変わらない、
やわらかで、どこかとぼけたような笑みを
浮かべて、画面の中にいました。

以来、こちらの建物に伺う度に、
「しろちゃん、こんにちは。来たよ」
と声をかけています。

私の大事な、京都の友達です。

長々と書きました。読んで下さってありがとうございます。

今日は、カフェでコーヒーを飲みながら、というよりは、
バーでウィスキーかカクテルを飲みつつ、の時間帯になってしまいました。

皆さまも、またお立ち寄りくださいませ。

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