カンセイ・ド・アシヤ文化財団カンセイ・ド・アシヤ文化財団

食べる?食べない?それが問題だ

こんばんは。代表理事の山田 良です。

お盆に入っても、なかなかの酷暑が続いております。
皆さま、お変わりないでしょうか。

こう暑いと、なかなか食欲もわかないもので、夏ばてだわ、という方も
多いのでは、と思います。

先回に続いて、「演奏家あるある」話をもう一つ。

先回では、演奏家はアスリートに通ずる面が多いというお話を書きましたが、
その流れで、今回は、

「演奏家と食事」について、です。

およそ、プロと呼ばれる仕事をなさっている方であれば、職種問わず、ベストの
仕事をするために、普段から体調管理に気を使われていると思いますが、
中でも、演奏家という職業の方々は、食事や食べ物にこだわりのお持ちの方が多い

ように思います(と申しますか、実際は両極端、と言えるかもしれません。
全くこだわりのない方もいらっしゃいますので)。

中でも、身体が即楽器、と言っても過言ではない声楽家、オペラ歌手の方の中には、
普段摂る飲み物や食べ物に気をつけておられる方が多いようですね。

カフェイン、アルコールの類は一切口にせず、普段はハーブティーを愛飲される方や、
外出先での飲み物はホットミルクのみ、という方もお聞きします。

今を去ること40年以上前の話だそうですが、来日されたフランス人演奏家が
完全ベジタリアンだということで、当時は皆無に等しかった菜食レストランを探して
スタッフが大阪市内中を奔走した、というエピソードを聞いたことがあります。
この時は、たしか梅田の「丸ビル」に入っていたレストランが、菜食対応してくれる、ということで
漸く食事場所を確保できた、とのことでした。

楽器を問わず、演奏家の間で愛好者が多いのが、チョコレートのように思います。
記憶力増進効果、気分転換作用などを期待して、ということで、あらかじめお聞きしておいて、
楽屋お見舞いなどにお持ちすると、大変喜ばれたりします。

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楽屋、といえば。

本番前に食事をするか否か。
これは「食べる」派「食べない」派、真っ二つに分かれる印象があります。

「食べる派」の方は、本番前にカロリー補給しておかないとエネルギーが続かない、食べることで
落ち着くなど、を理由として挙げられる方をよく聞きます。

対して「食べない」派は、もう、食べたら緊張が切れる、集中できなくなる、以前食べて
演奏したらパフォーマンスがひどかったから、二度と食べない、などなど、色々な理由をお聞きします。

いずれにしても、本番当日、というのは一種の非日常空間になることが多いので、
食事一つとっても、なかなか難しい問題になるのかもしれませんね。

楽屋見舞い、というのは、昔から洋の東西を問わず、観客/聴衆が、お気に入りの役者や
演奏家にプレゼント、差し入れとして贈ってきたものですが、このところは、楽屋見舞いを
めぐる事情も変わってきているようです。

かのロックバンド「聖飢魔II」のボーカル、デーモン小暮閣下が出された「法度」(はっと)が
最近ネット上を中心に話題になっているそうです。

(なにぶん、御風貌が御風貌ですから、いろいろな先入観やお考えをもって彼のことを見る方は
多いと思うのですが、私自身は、この方は「強面」の裏に、日本文化に対する深い敬意と造詣を
もっておられる、真摯な表現者の横顔をお持ちと見受けます)

この「法度」、コンサートや演劇、ライブなどで、観客/聴衆が守るべきマナー、ガイドラインを
書いているのですが、色々な意味で、最近のご時世を映した内容だなあと思います。
彼ならではの言葉遣いで「貢ぎ物」などと書いてはおられますが、要するに
「誰からかわからない楽屋見舞いは受け取れない」ということが書いてあります。

これは、非常に悩ましい話です。

実際、クラシックの演奏会などで、オーケストラが出演したりする時には、舞台裏や楽屋は
てんやわんや、ちょっとしたカオスになりがちです。大人数が出演しているところへ、
楽屋見舞い、プレゼントもかなりの数が届けられると、よほど事務方スタッフが上手に管理
していないかぎり、終わってから「これ、誰あての?」という楽屋見舞いが複数出てくる、
などということは日常茶飯事。
生花や生ものなどだと、さらに厄介なことにも。

さらに、最近では、本当に色々な文脈でプレゼントや楽屋見舞いを持っていく方もおられるわけで。
実際、思わぬところでご迷惑になったり、おかしな方向へエスカレートしてしまったり、
という話も聞かないわけではありません。

この際、楽屋見舞い、差し入れ、プレゼントの類いは一切ご遠慮させていただきます、
という、一見冷たい方法をとらざるを得ないのかもしれませんね・・・

その一方で、あの時の忘れられない「思い出の楽屋見舞い」や、いつも来てくださるあの方の、
「元気をもらえる楽屋見舞い」もあったりします。

楽屋見舞いの白いスイートピーの花束に、元気をもらう、
というピアニストの方がおられます。

亡くなられたお父様の旧友の方が、いつも演奏会に来て下さって、
終演後に楽屋に来て下さいね、と言っても、「疲れているだろうから、またね」と言って、毎回
白いスイートピーの花束を、開演前に楽屋に届けて下さるのだそうです。

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(画像お借りしました)

「いつも、開演2時間くらい前、ゲネ(リハーサルのこと)が終わった頃に、楽屋に届くんです。
あ、今日も来てくれはるんやなあ、と思って。Mさんが客席にいてくれてはる、
と思ったら、勇気がわくんです」

ちなみに、白いスイートピーは、亡きお父様お気に入りのお花でもあったそうで。

 

食事から楽屋見舞いときて、食べ物から少しお話が横ずれしました。

最後に、関西ならではの?、本当にあった面白エピソードを一つ。

実は、これまでに、三度、本番前に「たこ焼き」を食べる、という方々に
お会いしました。全員、大阪出身の方ではない(と思います)ケースです。

お一人は、コンクールの前に。
「たこ焼き食べたいんですが、近くに売ってませんか」と。

もうお一人は、コンサートの本番前に。
「もうね、あのボリュームがね、ちょうど、いいんですよ、本番前の胃袋に。
あれを一舟、8個か10個食べたら、ちょうど良い具合にハラが落ち着いてね、

うまく演奏できるんです」

最後のお一方は、終演後に。
始まる前に

「すみません!ほんとーに申し訳ないですが!終わったら、熱々のたこ焼きと

冷えたビール、お願いできませんか?お金はかかってもいいんで!」

理由を聞くと、大阪で公演した後は、たこ焼きとビールでないと、終わった気がしないんだそうです。

夏であろうが、冬であろうが、関わらず。
楽屋で一人、タキシードを脱いで、ランニングシャツ一丁になって、キンキンに冷えた缶ビールを

プシュッ、熱々のたこ焼きをほおばる。

また、大阪来よう、と思う瞬間なんだそうです。

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暑い日が続きますが、時には冷えたビールでもいただいて
英気を養いつつ。残る夏をしのいでまいりましょう。

また、お立ち寄りくださいませ。

 

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